借金の消滅時効はいつ成立するのか(基礎知識)

借金の消滅時効が成立しているかどうかを判断するためには、その借入の消滅時効期間が5年なのか10年なのか、また、いつから時効期間が進行するのかを正しく理解する必要があります。以下に、消滅時効の基礎について解説しますが、実際に判断をするに当たっては、当事務所へご相談にお越しください。

1.借金(債権)の消滅時効
2.消滅時効はいつから進行するのか
3.貸金業者からの借金の消滅時効について
4.判決で確定した権利の消滅時効
5.消滅時効の中断について
6.時効の利益の放棄とは

1.借金(債権)の消滅時効

借金(債権)の消滅時効については、下記のように民法で定められており、10年間で時効が成立するのが原則です。

民法167条1項 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。

債権の行使とは、債権者が債務者に対して何らかの請求をおこなうことをいいます。10年間債権を行使しないでいると債権が時効消滅してしまうわけですが、そうであれば、いつから債権の行使が出来るのかが、消滅時効が成立しているか否かを判断するために重要です。

貸主(債権者)としては、お金を貸している立場だからといって、借主(債務者)に対していつでも請求出来るわけではありません。請求することが出来るのは、弁済期が到来してからです。弁済期とは、債務者が債務の弁済をするべき時期をいいます。つまり、弁済期日(返済期日)が決まっているときは、その期日が経過しても弁済されないときになって、はじめて請求することが出来るわけです。

2.消滅時効はいつから進行するのか

消滅時効は権利を行使することができる時から進行します(民法166条1項)。

債権を行使することが出来るのは、上記のとおり「弁済期が到来したとき」ですから、つまり、消滅時効は弁済期が到来したときから進行するわけです。

たとえば、毎月末日払いの契約だったとして、2015年3月末日の返済はしたものの、翌月4月末日の返済を怠ったとします。この場合、2015年4月末日に弁済期が到来したこととなり、このときから消滅時効が進行することとなります。

3.貸金業者からの借金の消滅時効について

貸金業者からの借金については、商行為による債権に該当するため、民法で定められた10年間ではなく、商法の規定によって5年間で消滅時効が成立します。

商行為によって生じた債権は、5年間行使しないときは、時効によって消滅する(商法522条から抜粋)

貸金業者からの借金とは、消費者金融(サラ金)やクレジットカードによる金銭借入を指します。また、銀行からの借金も商行為に当たるため消滅時効期間は5年ですが、信用金庫からの借入については消滅時効期間が10年となります。

これは、信用金庫は商法上の商人には当たらないので、商人でない個人が、信用金庫から借入をするのは商行為ではないとされるからです。したがって、信用金庫からの借入であっても、借主が商人である場合には、消滅時効期間が5年間となります。結局、消滅時効期間が5年なのか10年なのかの判断は、債権者および債務者のいずれかが商人に当たるのかによることとなります。

4.判決で確定した権利の消滅時効

最後の返済のときから長期間が経過していると、債権者から訴訟(または支払督促)を起こされていることがあります。裁判所での判決などにより権利が確定している場合、消滅時効期間は権利確定のときから10年となるので要注意です。

確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする(民法174条の2第1項)

5.消滅時効の中断について

時効の中断があると、それまで経過していた時効期間がゼロに戻ってしまいます。つまり、5年間が経過する直前に時効が中断したら、その時点から5年間が経過しないと時効にならないのです。時効の中断は以下の事由により生じます。

1.請求
2.差押え、仮差押え、仮処分
3.承認

1の「請求」は、単に請求書や督促状を送っただけでは駄目で、訴訟の提起や支払督促など法的手続でなければなりません。また、裁判上の手続でなく、請求書、督促状、訴訟予告通知書などの送付によるのは、請求ではなく「催告」に当たります。催告をした場合には、その後6ヶ月以内に、時効中断事由となる訴訟上の請求などをすることで時効が中断します。

「催告」については下記の民法153条で定められています。

催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない(民法153条)

つまり、消滅時効の完成が迫っている場合、取り急ぎ「催告」をしておき、その後6ヶ月以内に「裁判上の請求」をすれば、時効が中断するということです。ただし、催告により、消滅時効の完成が延長されるのは一度だけですから、催告を繰り返しても、再び時効期間を延長できるわけではありません。

3の「承認」は、債務者が債務の存在を認めることです。消滅時効の時効期間が過ぎる前に、自分に支払い義務があることを認めると、そこで時効が中断してしまいます。債権者からの督促に対して口頭で返済猶予を求めたような場合でも、時効の中断事由とみなされる可能性もありますが、それより、典型的な例としては、たとえ一部(少額)であっても返済してしまった場合です。

消滅時効の完成時期が近づいてくると、督促が激しくなることがあります。訴訟の予告をしつつ、大幅な利息や元本の支払免除を持ちかけてくるケースもあります。そのような場合には、消滅時効の完成について検討するのも必要かもしれません。

6.時効の利益の放棄とは

時効の利益の放棄とは、時効の利益を受けないという意思表示をすることです。債権の消滅時効の場合でいえば、消滅時効が完成した後に債務の弁済や承認をすれば、時効の利益を放棄したことになります。

すでに時効が完成しているならば、その後に債務の弁済や承認をしても、時効の中断が問題になることはありません。しかし、この場合には時効の利益を放棄したことになりますから、再び時効完成に必要な期間が経過するまでは、時効が完成しないことになるわけです。

時効の利益は、あらかじめ放棄することができないとされています(民法146条)。つまり、時効の利益を放棄できるのは、時効完成後に限られます。これは、債権の消滅時効においては、債権者が債務者に対してあらかじめ時効の利益を放棄するよう強要するのを避けるためなどが理由です。

なお、消滅時効が完成する前に債務の弁済や承認をしたときには時効が中断するのであり、これは時効の利益の放棄とは別の問題です。

時効完成後、その事実を知らずに債務承認をした場合

時効が完成していることを知らずに、元本や利息の一部であっても支払いをしてしまった場合でも、時効の利益を放棄したものとする判断が下記の判例により示されています(最判昭和41年4月20日)。

債務者が、自己の負担する債務について時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかつたときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されないものと解するのが相当である。けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろらから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当であるからである。

けれども、貸金業者からの執拗な取立行為などにより支払いをしてしまった場合などでは、その後の、時効援用を認めるとした下級審の判決も複数出ています。1度支払ってしまったからといって諦めてしまうのでは無く、専門家に相談してみるのがよいでしょう。

被告の一部弁済によって原告らに信義則上保護に値する期待が生じるとは言い難く、他方、時効完成を知らずに、原告らに言われるままに支払をした被告が、その後時効完成の事実を知って、時効を援用することが信義則に反すると評価するのは酷にすぎる。したがって、本件においては、被告の時効援用権の行使は信義則による制限を受けないと解するのが妥当である(札幌簡裁平成10年12月22日判決)。

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