特例有限会社の商号変更による株式会社設立登記

有限会社を、簡単な手続により、株式会社に変更することが出来ます。具体的には、会社名に「株式会社」の文字を使用する商号変更をした後、現在の有限会社については解散の登記、移行後の株式会社については設立の登記をします。

1.特例有限会社とは

平成17年の会社法施行にともない有限会社法が廃止されたことにより、新たに有限会社を設立することはできなくなっています。会社法の施行時に現存している有限会社については、会社法の施行日以後は株式会社として存続しますが、商号中に株式会社ではなく有限会社という文字を用いるものとされています。この有限会社のことを、法律上では「特例有限会社」といいます。つまり、会社法施行後に存続している有限会社はすべて特例有限会社であるわけです。

2.特例有限会社の商号変更による株式会社設立登記

2-1.手続きの概要

特例有限会社を株式会社に変更するには、まずは株主総会の決議により定款を変更してその商号中に株式会社という文字を用いる商号の変更をします。そして、既存の有限会社については「商号変更による解散」の登記、新たにできる株式会社については「商号変更による設立」の登記をします。

この株式会社の設立の登記と有限会社の解散の登記は同時におこなわなければなりません。そして、定款変更(商号変更)の効力は、会社の本店所在地で設立および解散の登記をすることによって生じます。

変更する商号は、有限会社のときとは全く違うものでも差し支えありません。たとえば、これまで「有限会社松戸物産」だったのを「株式会社松戸物産」とすることもできますし、「株式会社トーキョー商事」などと変更することもできます。

2-2.必要書類

特例有限会社の商号変更による株式会社設立登記に必要な書類はおもに次のようなものです。また、有限会社のときに使用していた印鑑カードは返却し、新たに交付を受けることになります。

1.株主総会議事録

2.定款 ・・・商号変更後の株式会社の定款

3.印鑑届書 ・・・代表者個人の印鑑証明書を添付

4.委任状 ・・・代理人によって登記申請をする場合のみ

有限会社から株式会社へ移行する際に、それまでの取締役の任期が満了することがあります。この場合、有限会社の取締役だった人が株式会社の取締役になるとしても、あらためて株主総会で取締役を選任し、取締役会(または取締役の互選)で代表取締役を選任する必要があります。さらに、登記をする際も、取締役、代表取締役が選任された旨を証するための、株主総会議事録、取締役会議事録(または取締役の決定書)が必要なります。

取締役非設置会社の場合、株式会社への移行時に新たに就任(再任は除く)した取締役がいるときは、その取締役の就任承諾書の印鑑につき印鑑証明書を添付する必要があります。この他にも、代表取締役の選定を証する書面へ印鑑証明書の添付が必要となることもあります。

2-2.費用(登録免許税・司法書士報酬)

特例有限会社の商号変更による株式会社設立登記にかかる費用は次のとおりです。

1.登録免許税(有限会社の解散登記) 3万円

2.登録免許税(株式会社の設立登記) 3万円~(注)

3.登記簿謄本(登記事項証明書) 1通480円(オンライン申請の場合)

4.司法書士報酬(当事務所にご依頼いただいた場合)6万4千800円~

(注)商号変更による株式会社設立の登録免許税額は次のように計算します。 資本金の額の1000分の1.5(商号変更前の特例有限会社の資本金額を超過する部分については1000分の7)の額。ただし、この額が3万円に満たない場合は3万円。また、100円未満の端数があるときは、その端数金額は切り捨て。

2-3.株式会社への移行と同時に出来る登記

有限会社から株式会社への移行をする際、会社の目的、発行可能株式総数、役員(取締役、監査役)などの変更の他、株式発行や、準備金・剰余金の資本組み入れによる増資を一緒に行うことも可能です(ただし、本店移転を同時に行うことはできません)。

たとえば、有限会社が、取締役および会社の目的変更をした場合の登録免許税は、役員変更1万円(資本金1億円以下の場合)、目的変更4万円の合計4万円です。これを株式会社への移行と同時に行う場合、移行登記の登録免許税(最低6万円)だけで済むわけです。

3.株式会社に移行することのデメリットなど

特例有限会社はあくまでも従来の有限会社の延長とでもいうべき会社の形態ですから、たとえば、取締役会や会計参与を設置することが出来ません。しかし、とくに組織を大きくすることを目的とせず、これまで通り会社経営をおこなっていくのであれば、上記のような制約は問題になりません。

それよりも、株式会社に移行することによって、特例有限会社のままであれば不要であった手続き等をおこなわなければならなくなります。

たとえば、特例有限会社では取締役の任期を定める必要がありませんが、株式会社に移行した場合には、役員の任期が最大でも10年間となります。そのため、株式会社では、取締役が変更になるわけではなくとも、10年に一度は役員の改選に伴う登記が必要なのです。

また、株式会社では、定時株主総会の終結後に貸借対照表等の公告をするものとされていますが、特例有限会社はこの規定が適用されません。つまり、特例有限会社では、いわゆる決算公告をする義務が無いのです(現実には、株式会社であっても全ての会社が決算報告をしているわけではありませんが、もともとやらなくていいのと、やるべきことをやっていないのは同じではありません)。

特例有限会社から株式会社への移行は簡単におこなうことができますが、特例有限会社が受けられていたメリットを失うことにもなります。その点を考慮した上で、株式会社への移行をするか判断するべきでしょう。

会社法440条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
(2~4項 省略)

会社法332条 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。

2  前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
(3~7項 省略)

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