離婚給付契約公正証書(財産分与、慰謝料)

協議離婚をする際に、財産分与、慰謝料、養育費など、金銭の支払いについての取り決めをすることがあります。この場合、口約束だけで無く、離婚協議書を作成しておくべきです。

離婚協議書は当事者間で作成することもできますが、公証役場で公正証書(離婚給付契約公正証書)にしておくのが良いでしょう。公正証書であれば、養育費など金銭の支払いが滞ったときには、裁判手続きなどをすることなく、ただちに相手方の財産に対して強制執行(差押え)できるからです。

協議離婚にともない公正証書を作成するときは、ご自身で公証役場に問い合わせをして公証人に相談することもできます。しかし、財産分与による不動産の名義変更をするときには、司法書士にご相談ください。

その場合、離婚公正証書の内容について事前に検討をしたうえで、司法書士から公証人へお取り次ぎすることもできます。専門家同士で準備を進めますから、ご依頼者本人は一度だけ公証役場に行けば公正証書ができあがります。

離婚給付契約公正証書(財産分与、慰謝料)の作成例

以下に、離婚給付契約公正証書の例を示します。本例では、離婚に伴う慰謝料としての金銭の支払い、財産分与としての不動産の譲渡について定めていますが、養育費やその他の事項を加えることもできます。

平成○年 第○○○○号

離婚給付契約公正証書(例)

  本公証人は、当事者の嘱託により、次の法律行為に関する陳述の趣旨を録取し、この証書を作成する。

夫松戸一郎(以下「甲」という。)と妻松戸花子(以下「乙」という。)は、離婚することに合意し、協議離婚の届出を出すに際し、財産分与および慰謝料の支払いその他に関し、平成○年○月○日、次のとおり契約を締結した。

(離婚給付契約)

第1条 甲は、乙に対し、本件離婚に伴う慰謝料として金100万円の支払い義務があることを認め、これを平成○年○月末日限り、乙の指定する金融機関の預金口座に振り込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。

2 甲は、乙に対し、期限後は、当該期限の翌日から、第1項の元本金100万円から既払分を控除した残額に対し、完済に至るまで○パーセントの割合による遅延損害金を支払う。

(財産分与)

第2条 甲は、乙に対し、離婚に伴う財産分与として、下記の不動産を譲渡することとし、平成25年2月末日までに、甲の持分について乙への所有権移転登記手続きをする。本件不動産に課せられる固定資産税等の公租公課は、所有権移転登記のされる日までは甲の負担とし、本件不動産の所有権移転登記費用は乙の負担とする。

 財産分与対象不動産の表示 (省略)

(強制執行)

第3条 甲は本契約第1条に定める金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。

以上

(以下省略)

離婚給付契約公正証書(例)の解説

上記の離婚給付契約公正証書は、第1条が慰謝料の支払い、第2条が不動産の財産分与についての契約です。さらに、第3条で金銭債務である慰謝料の支払いをしないときは、ただちに強制執行ができる旨を定めています。

公正証書により強制執行(差押え)ができるのは金銭の支払いについての条項に限られるので、不動産の財産分与について定めておいても、公正証書によって名義変更(所有権移転登記)をすることはできません。

たとえば、調停離婚の場合の調停調書では「申立人は、相手方に対し、離婚に伴う財産分与として、別紙物件目録記載の不動産を譲渡することとし、本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする」というような文言があれば、相手方の協力を得ること無く名義変更の登記が可能です。

けれども、離婚公正証書の場合には、離婚の相手方にも登記手続きに協力してもらう必要があるのです。財産分与による不動産の所有権移転を、法務局に登記申請できるのは離婚成立後です。つまり、離婚届を出し、その後に財産分与による不動産の所有権移転登記をするわけですから、しっかりとした段取りが必要です。

まずは公証役場で離婚公正証書を作成し、続いて登記の準備を済ませたうえで、離婚届を提出するのが安心です。さらに、登記の必要書類を事前に司法書士に預けてから離婚届を出すようにすれば、後になって相手方の協力を得られずに困るような事態を避けられます。

焦って離婚届を出してしまってから後悔することの無いよう、不動産の財産分与を受けようとするときは、事前に司法書士へご相談ください。


司法書士高島一寛

千葉司法書士会 登録番号第845号

簡裁訴訟代理関係業務 認定番号第104095号

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(略歴)
・1989年 千葉県立小金高等学校卒業
・1993年 立教大学社会学部卒業
・2000年 司法書士試験合格
・2002年 松戸市で司法書士高島一寛事務所を開設

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松戸市の高島司法書士事務所は2002年2月の事務所開業から20年以上の長期にわたり、ホームページやブログからお問い合わせくださった個人のお客様からのご相談を多数うけたまわってまいりました。

当事務所の新規開業から2023年末までの相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)の申請件数は1200件を超えています。


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