ご自身が所有している不動産を、配偶者(妻、夫)に引き継ぐ方法として、生前贈与と相続のどちらを選択すべきかとのご相談を多くいただきます。
このページでは、おもに不動産登記にかかる費用や手続きについて比較することにより、生前贈与と相続のどちらによるべきかご説明をしていきます。
分かりやすくご説明することを目的としているため、厳密にいえば正確ではない記述もあります。実際に手続きをする際には専門家に相談なさることをお勧めします。
また、不動産の贈与による登記についての一般的な解説については、高島司法書士事務所(千葉県松戸市)による、贈与登記(生前贈与)のページをご覧ください。
なお、司法書士は税金についてのご相談をうけたまわることはできないので、相続税や贈与税など税金については税理士にご相談ください。
配偶者への生前贈与と相続の選択
1.登記費用の比較
2.配偶者に不動産を引き継ぐ方法
2-1.相続で誰に不動産は引き継がれるのか
2-2.相続によるのが難しい場合
3.生前贈与の検討
3-1.不動産の生前贈与をするのに必要なこと
3-2.贈与税の配偶者控除
3-3.相続税の対策になるのか
1.登記費用の比較
不動産の所有権移転登記(名義変更)をする際には、登録免許税という税金がかかります。
この登録免許税の金額は、登記をする不動産の固定資産評価額により計算しますが、相続と贈与の場合の税率は次のとおりです。
・相続 固定資産評価額の0.4%
・贈与 固定資産評価額の2.0%
たとえば、固定資産税評価額が1000万円である場合、相続ならば登録免許税は4万円ですが、贈与によるときには20万円なので、同じ所有権移転登記をするのに5倍もの税金(登録免許税)がかかるわけです。
上記の登録免許税に加えて、司法書士に手続きを依頼する場合には、司法書士報酬もかかることになります。
司法書士報酬の額は依頼する事務所により異なりますが、一般的なご自宅についての所有権移転登記を当事務所にご依頼いただく場合の、司法書士報酬の目安は次のとおりです。
・相続登記 7万円~
・贈与登記 5万円~
個々のケースにより司法書士報酬は変わってきますが、ご自宅についての一般的な登記手続きであれば、相続と贈与との司法書士報酬の差はそれほどありません。
上記を単純に合計すると、相続の場合は総額11万円、贈与の場合には総額25万円となります(実際にはその他の実費などもかかるので、あくまでも目安としての総額です)。
よって、贈与を選択すべき場合としては、相続の場合の5倍の登録免許税を支払ってでも、生前に登記をしておくべきだと判断するときであることになります。
2.配偶者に不動産を引き継ぐ方法
ご自宅などの不動産をご家族(配偶者、子)に引き継ぐ方法としては、生前贈与、相続のどちらかによるのが通常でしょう。
生前贈与の場合には自らの意思により手続きをする必要がありますが、生前対策を何もしなかった場合であっても、死亡することにより遺産は相続人へ引き継がれることとなります。
また、配偶者に不動産を引き継ぐ方法としては、上記のとおり、相続によるよりも生前贈与の方が費用がかかるのが通常です。
上記を踏まえたうえで、生前贈与を選択すべきケースは、その選択についての明確な理由がある場合だといえます。
2-1.相続で誰に不動産は引き継がれるのか
人が亡くなった場合、その遺産は相続人に引き継がれることになります。誰が相続人になるかは法律(民法)で決まっています。
配偶者は必ず相続人になります。そして、配偶者とともに次の順序により相続人になります。
1.子(または、その代襲者)
2.直系尊属(父母、祖父母など)
3.兄弟姉妹(または、その代襲者)
上記により、夫婦の間に子がいるときには、配偶者と子の話し合いにより誰が不動産を相続するかを決定します(これを「遺産分割協議」といいます)。
配偶者が不動産を取得することに子が同意をするならば、生前に何もしておかなくとも、相続によるので通常はまったく問題ないわけです。
2-2.相続によるのが難しい場合
自身の死後、配偶者へ確実に不動産を引き継がせたいと考えている場合に、相続によるのが難しいことがあると考えられるのは主に次のようなケースです。
・自分自身が再婚していて、前妻(前夫)との間にも子がいる。
・夫婦の間に子がいないため、夫(妻)の兄弟姉妹が相続人になる。
上記の相続関係のようなケースでは、「前妻(前夫)との間の子」、または「夫(妻)の兄弟姉妹」が相続人となりますが、相続開始後に遺産分割協議への協力を得るのが難しいことがあるわけです。
上記いずれの場合であっても、配偶者が不動産を取得することについて、相続人全員からの合意と協力が得られるのであれば何も問題ありません。
もしも、相続人のうちの1人でも、手続きに協力を得るのが難しいと考える場合に、配偶者に対して不動産を生前贈与しておく実益があるということです。
なお、他の相続人の同意を得るのが難しいことが予想される場合、生前贈与によるほか、遺言書の作成をしておくことも考えられます。どちらの方法を選択すべきかについては、専門家(弁護士、司法書士)に相談することをお勧めします。
3.生前贈与の検討
生前贈与によれば、ご自身の考えどおりに配偶者へ不動産を引き継ぐことが可能です。相続によるのでも問題ないと考える場合であっても、生前贈与をしておけば安心かつ確実であるわけです。
ただし、贈与による場合、相続に比べて登記費用が高額になることのほか、不動産取得税がかかることや、贈与税や相続税についての検討も事前にしておくべきです。
3-1.不動産の生前贈与をするのに必要なこと
贈与とは、法律(民法)により定められた契約の1つです。
民法第549条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
不動産の贈与であれば、所有者がその不動産を無償で与える意思を相手方に伝え、相手方がそれを受諾することによって効力を生じるわけです。
そのため、夫婦間で不動産の生前贈与をしようとする場合であっても、夫婦のそれぞれが意思能力を有していることが必要です。
たとえば、どちらかが認知症などにより意思能力を失っている場合には、不動産の贈与をすることはできません(ご家族の方が代理で手続きをするというようなことは認められません)。
また、司法書士が贈与による登記の手続きをご依頼いただく場合、その不動産の所有者について、対面でのご本人確認及びご意思の確認が必要となります。
つまり、不動産の生前贈与をしようとする場合、あげる側(贈与者)、もらう側(受贈者)の双方が関与することによって、はじめて手続きが可能となるのです。
3-2.贈与税の配偶者控除
不動産など財産を贈与する場合、贈与税について事前に検討する必要があります。たとえば、夫婦間で1000万円の不動産を贈与した場合には、275万円もの贈与税を支払う必要があります(一般税率の場合)。
ただし、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住用不動産の贈与をする場合には、基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例があります。
この贈与税の配偶者控除のことを、おしどり贈与といっています。詳しい適用条件については、国税庁による「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」をご覧ください。
3-3.相続税の対策になるのか
相続人間に争いが生じる可能性などないと考えるときであっても、相続税対策として生前贈与を検討する場合もあります。
たとえば、贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)の特例により、夫から妻へ2,000万円の自宅を贈与した場合、夫の財産はその分だけ減ることになりますから、夫が死亡したときの相続税を少なくすることができます。
ただし、相続税には配偶者の税額軽減(配偶者控除)がありますから、生前贈与によらずとも税金がかかることなしに配偶者に自宅を引き継がせることは可能です。
また、そもそもの話として、相続税がかからないのであれば、相続税対策について検討する必要はありません。
相続税対策として、不動産の生前贈与をしようとする場合には、事前に税理士に相談することをお勧めします(司法書士が相続税、贈与税など税金の相談をすることは法律で認められていません)。
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