所有権保存の登記とは、その不動産について初めてする所有権の登記のことをいいます。建物を新築した際には所有権保存の登記をおこなっているのが通常ですが、所有権保存登記をするのは義務ではないため未登記になっていることもあります。
建物の新築時に住宅ローンを利用した場合には、不動産に抵当権が設定されます。抵当権設定登記をするためには、その前に所有権保存の登記がされている必要があります。けれども、全額を自己資金でまかない借入をしなかった場合などには、建物の新築時に所有権保存の登記がされていないこともあるわけです。
所有権保存の登記をするのは任意ですが、建物の表題登記をするのは義務です。そして、表題登記をすることにより登記記録の表題部へ所有者の氏名及び住所が記録されます(なお、表題登記もされていない建物もまれにありますが、その場合は権利証も登記事項証明書も存在しないことになります)。
不動産登記法第47条1項
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。
所有権保存登記はその表題部所有者によっておこなうほか、表題部所有者の相続人からもすることもできます。たとえば、土地と建物を相続した際に、建物の所有権保存の登記がされていなかったら、建物については相続人による所有権保存登記をし、土地については相続による所有権移転登記をすれば良いわけです。
不動産登記法第74条(所有権の保存の登記)
所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
1 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
(以下省略)
表題部所有者の相続人が所有権保存登記をする場合、相続人全員の共有名義に登記する必要はなく、遺産分割協議によりその建物を相続する人が決まっていれば、その相続人の単独名義に所有権保存の登記をすることができます。
数個の未登記不動産について、遺産分割協議の結果に基づき各単独所有名義に所有権保存の登記をすることができる(登研45号)
相続人による所有権保存登記をする際には、相続登記をする場合と同じように相続を証する戸籍など多くの書類が必要となります。そのため、相続登記(相続による所有権移転登記)とあわせて、所有権保存の登記についても司法書士に依頼するのが通常です。